ツボの位置が変わった?WHO標準経穴361と、鍼灸が「効く」仕組みを解説

この記事でわかること

最近、テレビや雑誌で「ツボ押し」をよく見かけます。実は、ツボ(経穴)の位置は昔と変わっています。私自身、鍼灸師になった当時の教科書と、今の標準では位置が違っているんです。
この記事では、
①ツボの位置が変わった理由(WHO標準経穴361)、②当院が「◯◯に効くツボ」より「経絡の流れ」を重視する理由、③鍼灸が痛みに働く3つのメカニズム、④妊活中のセルフケアのお灸のコツ、の4つを順に解説したうえで、「鍼灸と血流改善」をめぐる研究の現状についてもお伝えします。

目次

  1. 実は昔と違う。ツボの位置は「WHO標準経穴」で見直された
  2. 当院は「◯◯に効くツボ」より「経絡の流れ」を重視する理由
  3. ツボが効くメカニズムがわかってきた。鎮痛作用は3段階
  4. 妊活中のセルフケアは「流れ」を意識して。お灸も一箇所だけじゃない
  5. まとめ
  6. よくある質問

実は昔と違う。ツボの位置は「WHO標準経穴」で見直された

「冷え性に効くツボ」「頭痛に効くツボ」——テレビや雑誌でそんな特集を見ると、つい押したくなりますよね。ところが、同じ「合谷」「三陰交」という名前のツボでも、本や時代によって「押す場所」が微妙に違うことをご存じでしょうか。

経穴(ツボ)の位置は、もともと一つに決まっていたわけではありません。中国の古典や日本の明堂図など、文献や流派によって、同じ名前のツボでも取り方が少しずつ異なっていました。

そこで国際的なルール作りが進められました。世界保健機関(WHO)の西太平洋地域事務局(WPRO)が主導し、専門家会議を重ねて位置の合意が得られ、2008年に英文公式版、2009年に日本語公式版『WHO/WPRO標準経穴部位』として、361の経穴の位置が国際標準として発行されました。

だからこそ、「雑誌のツボ地図が、昔読んだ本と少し違う」「私が鍼灸師になった当時の教科書と、今の標準では位置が変わっている」ということが起きます。これは誰かの間違いではなく、ツボの位置を世界で共通のものに揃える作業が進んだ結果なんですね。

※ 位置の標準化が変わっても、経絡という「流れ」の考え方そのものは変わっていません。次の章で、当院の考えを説明します。

当院は「◯◯に効くツボ」より「経絡の流れ」を重視する理由

ネットや雑誌には「◯◯に効くツボ」という見出しが並びます。間違いではありませんが、当院の姿勢は少し違います。当院では、特定の症状にツボを押すというより、経絡などの「流れ」(気・血・温かさ)を整えることを重視して施術をしています。

理由はシンプルで、位置が標準化されたとしても、経絡という「流れ」の考え方は変わらないからです。体全体の流れが滞っているところを整えるほうが、部分的にツボを押すよりも、体のバランスそのものに関われます。

とはいえ、ツボの中には反応がよく「よく効く」と感じるツボがあるのも事実です。だからこそWHOが361の経穴の位置を標準化し、世界中の研究で使えるようにした、とも言えます。「ツボ」と「流れ」はどちらか一方ではなく、流れを整えるための目印としてツボを使う——それが当院の考え方です。

ツボが効くメカニズムがわかってきた。鎮痛作用は3段階

「気の流れ」という言葉だけでは、鍼灸の効果をイメージしにくい方もいますよね。実は、鍼灸が痛みにどう作用するかは、現代の神経生理学でも少しずつ解明されてきています。大きく3段階に分けて説明されています。

①末梢神経レベル——軸索反射で血流を促進する

鍼を打つと、その刺激が軸索反射(刺激を受けた部位の末梢側に伝わる現象)を介して、局所の血流が促進されます。これにより、痛みを引き起こす物質が排出されやすくなり、炎症の軽減や回復の促進が期待できます。鍼を打ったあとに肌がほんのり赤くなるのは、その場所の血流が増えているサインです。

②脊髄レベル——痛みの信号を「選別」する働きを調整する

痛みの信号は脊髄で取捨選択されていて、すべてが脳に届くわけではありません。鍼の刺激は、この情報の「選別機能」に影響し、不要な痛み信号を抑える調整が働くと考えられています(いわゆる「ゲートコントロール理論」で説明される現象です)。

③脳内での鎮痛——βエンドルフィンなどの分泌

そして鍼刺激により、脳ではβエンドルフィンなどの神経伝達物質が分泌され、痛みそのものを感じにくくする反応が起きます。

このように、鍼灸は末梢・脊髄・脳と、複数の段階で痛みにアプローチしています。単一の「魔法のツボ」の話ではなく、刺激が体の複数のレベルで働く——だからこそ、鍼灸の有効性は科学的にも少しずつ解明されてきているのです。

妊活中のセルフケアは「流れ」を意識して。お灸も一箇所だけじゃない

妊活鍼灸院である当院でも、来院してくださる方にはセルフケアのお灸を頑張っていただいています。ここで、まず正直にお伝えしたいことがあります。

「妊活に効くツボ」という特効穴は、存在しません。

ツボ一つ押せば妊娠が決まる、というものではないんですね。それよりも、体の流れ(気・血・温かさ)を意識してみてください。お腹がぽかぽかと温かく、血の巡りが良い状態を保つことが、妊活の土台づくりになります。

「流れ」というと抽象的に感じるかもしれませんが、「鍼が血流を良くする」こと自体は、研究でも報告されています。たとえば、子宮動脈の血流が流れにくい不妊の女性に電気鍼を行ったところ、流れにくさ(インピーダンス)が下がったという報告があります。ただし、鍼灸が妊娠率を確実に大きく上げるとまで示された結論は、まだ出ていません。鍼灸はあくまで、医師の不妊治療と併用する「体づくりの選択肢」——当院もその立場で、気・血・温かさの流れを整えるお手伝いをしています。

ここで、当院で意外と多いパターンをご紹介します。上腹部は温かいのに、下腹部だけ冷たいタイプです。お腹全体が冷えているわけではなく、位置によって温度が違うんですね。だからこそ、お腹の中でも一箇所だけ触るのではなく、上下・左右、いろいろな位置を触って比べてみてください。冷えの「ある場所」がわかると、お灸をしても「流れを温めている」というイメージが持ちやすくなります。

※ セルフケアのお灸は、肌がほんのり温かく感じる程度の温度で。熱い・赤くなったと感じたら一度離してください。低温やけどにご注意ください。

まとめ

  • ツボ(経穴)の位置は、WHO標準経穴(361穴・2008年英文版/2009年日本語版)として国際的に見直された。昔の地図と違って見えるのはそのため。
  • 当院は「◯◯に効く特効ツボ」を押すのではなく、経絡の流れ(気・血・温かさ)を整えることを重視している。
  • 鍼灸の鎮痛作用は「末梢(軸索反射)→脊髄(信号の選別)→脳(βエンドルフィンなど)」の3段階で説明され、科学的にも解明が進んでいる。
  • セルフケアのお灸も、ツボを探すより「流れ」を意識。お腹の冷えは一箇所だけでなく、いくつかの場所を触ってチェックする。
  • 血流改善については研究報告(子宮動脈の血流が流れにくい不妊の女性に電気鍼を行った報告など)がありますが、妊娠率を確実に上げる結論はまだない。不妊治療と併用する「体づくりの選択肢」として捉えるのがおすすめです。

よくある質問

妊活に効くツボはありますか?

当院は「妊活に効く特効ツボ」は存在しない、という立場です。ツボは魔法の点ではなく、経絡の流れを整えるための目印。当院では気・血・温かさの流れを診ながら、施術とセルフケアのお灸をご提案しています。

なぜツボの位置が変わったのですか?

経穴の位置は古来、文献や流派によって微妙に異なっていました。WHO西太平洋地域事務局(WPRO)が361経穴の位置を国際標準(WHO標準経穴)として発行(2008年英文版、2009年日本語版)したため、鍼灸師の世代によって「習った位置」が異なることがあります。

鍼灸は血流を改善しますか?

子宮動脈の血流が流れにくい不妊の女性に電気鍼を行ったところ、流れにくさが下がったという研究報告(Stener-Victorinら、1996年)や、日本での中髎穴刺鍼に関する小規模な研究があります。ただし、妊娠率を確実に大きく上げるという結論はまだ出ていません。体づくりの選択肢の一つとして、医師の不妊治療と併用されることをおすすめします。

鍼灸は痛みに本当に効くのですか?

末梢(軸索反射による血流促進)・脊髄(痛み信号の選別)・脳(βエンドルフィンなどの分泌)という3段階のメカニズムで説明されており、その有効性は科学的にも解明されつつあります。体の状態によって感じ方には個人差があるため、まずはご相談ください。

妊活のお悩み、まずはご相談ください

監修:レガロ妊活鍼灸院 院長 市川博永

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プロフィール
鍼灸師。開業18年・延べ10万人以上の施術実績を持つ「ふないり鍼灸整骨院」院長。ご夫婦で不妊治療・流産を経験し、妻は40代での自然妊娠・出産に至った経験を持つ。「鍼灸×分子栄養学×中医薬膳」を掛け合わせた妊活サポートを提供し、開業5年で100人以上の妊娠報告。母校・IGL医療専門学校での特別講義や、一般社団法人婦人科セラピー協会のオンライン講師など、後進育成・講師活動も行う。

妊活ブログ
妊活症例レポート

参考文献

  1. WHO西太平洋地域事務局(WPRO)『WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region』(2008年)/日本語公式版『WHO/WPRO標準経穴部位』(医道の日本社、2009年):「世界で標準化…WHO標準経穴部位日本語公式版 発刊」
  2. 柳生岐佐志「経穴部位標準化の歴史的意義」:square.umin.ac.jp/mayanagi/paper02/AcuPoHi.html
  3. 「痛み学習テキスト」(鍼灸刺激の鎮痛機構):ahaki.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/itami_text.pdf
  4. Stener-Victorin E, et al.(1996年)ほか、鍼と子宮・内膜血流の研究:pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12368429/

市川博永のイメージ
(レガロ鍼灸院院長・ふないり鍼灸整骨院院長)
市川博永
当院は、単に技術を提供するだけでなく、確かな実績と学術的活動に基づいた専門的なサポートを行っています。 ◆ 圧倒的な臨床経験と妊娠実績 • 開業18年・国家資格者による施術 延べ10万人以上の施術実績を持つ「ふないり鍼灸整骨院」の院長が、全ての施術を責任持って担当します。 • 開院5年で100人以上の妊娠報告 自身も不妊治療を経験したからこそ辿り着いた「鍼灸 × 分子栄養学 × 中医薬膳」の掛け合わせにより、体質改善へ ◆ 医療現場やプロのセラピストへの指導実績(講師活動) その確かな知識と技術は、次世代の医療従事者や全国のプロの治療家からも認められ、講師として教壇に立っています。 • 母校・IGL医療専門学校での特別講義・講師登壇 • 一般社団法人 婦人科セラピー協会でのオンライン講師登壇 • その他、妊活や健康に関する各種イベント・セミナーへ多数参加 ◆ 出産後、お子様の成長まで見据えたサポート 私たちのサポートは「妊娠・出産」がゴールではありません。 • JCCA認定 キッズスペシャリスト資格保有 当院で無事に生まれてきてくれたお子様たちが、健やかに育つための成長・発達アドバイスや、子育てサポートも治療院にて行っています。
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